医療提供体制の改革の柱の一つである「患者の視点の尊重」においては、その基本的方向性として医療に関する情報提供の推進への取り組みが挙げられています。
このうち、患者が医療機関を選択する際に求められる情報と、受診した患者が自分に関わる診療情報に対する取り組みは、その扱いをやや異にするものです。
前者については、医療機関情報であって、具体的には実施している治療方法や平均在院日数、手術件数、分娩件数、疾患別患者数等、その医療機関が有する「診療・治療の質」を反映しているものとなり、これは医療機関の広告可能事項の緩和傾向によって、広報の対象になるものです。公的機関等によるこうした医療機関情報の提供推進や、個々の医療機関の取り組みによって、医療機関の選択に必要な情報を患者が手に入れることが可能になってきているといえます。
一方、後者は患者個別の診療情報であり、その中心であるカルテを含む診療記録の開示については、それぞれの医療機関における明確なコンセンサスとその周知徹底、十分な理解が求められます。
日本医師会が各医療機関に提示している準備事項には、「診療情報の提供に関する指針」の周知徹底、「診療に関する相談窓口」の設置、診療記録等の明示手続に関する院内規定整備等が挙げられていますが、とりわけ診療録(カルテ)の開示については、院内での周知徹底が求められるポイントといえます。
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