近年、単純なヒューマンエラーを原因とする重大な事故が多発していることは事実です。その原因はさまざまで一概に決め付けることはできませんが、いくつかあげてみることにします。
@ 制度的なしくみの疲弊によるもの
1960 年に導入された国民皆保険制度の基本コンセプトは均質・均等・平等であり、いわゆる護送船団方式的な考え方のもとに質の向上を怠ったり、リスクという概念そのものを希薄にし、制度疲労が増大したこと。
A 医師中心のプロダクトアウトによるもの
医師・医療施設側つまり提供側の論理(プロダクトアウト)により運営がなされ、患者主催が一般的になおざりにされ、顧客満足の充足(マーケットイン)への転換が遅れたこと。
B 技術重視(医師中心)によるもの
医師およびその医療技術中心の運営および専門技能者集団による縦割り組織が、チームケアへの転換を遅らせリスクに対する全院的な対応を遅らせたこと。これが国際的な品質マネジメントシステムのしくみや、産業界の同様のシステムの導入を遅らせたとみています。
C 医療専門職のプロ意識の欠如によるもの
医師、看護士その他の医療専門職が、戦後のいわゆる自由の中でプロフェッショナルとしての倫理観や使命感を希薄にしたこと。
D 情報公開、患者主権の回復によるもの
IT 化が進む中、種々の情報が獲得しやすくなり、患者が主権者として意識し始め、マスコミを通じてものを言うようになったこと。
E 職員の不満
医療提供施設に働く職員(特に医師以外のスタッフ)が、その職場にいきがい、働きがいを見出すような職員満足制度( Staff Satisfaction )の不足・不備が顕在化していること。
これらの複合要素が事故の多発原因と考えられています。
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