遅刻、早退した時間について賃金を控除することは、ノーワーク・ノーペイの原則からいって何ら問題はありませんが、控除することができるのは、あくまでも実際に遅刻、早退した時間に相当する賃金分だけです。これは、 1 ヵ月分をまとめた場合の端数時間についても同様です。例えば、 1 ヵ月の合計の遅刻、早退時間が35分の場合に1時間分の賃金を控除すると、25分は、労働した時間から賃金をカットすることになりますので、労働基準法第24条の賃金の全額払いの原則に反し、違法となります。
この点について、行政解釈でも、遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理の取扱いについて、「5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し、違法である」としています。
しかし、減給の制裁として行う場合には、貴院のような取扱いも差し支えありません。行政解釈では、「このような取扱いを就業規則に定める減給の制裁として、法第91条の制限内で行う場合には、全額払の原則には反しないものである」としています。したがって、就業規則に減給の制裁の定めがある場合に、労働基準法第 91 条に定める範囲内で減給することは、法に反しないことになります。この場合、労働基準法第 91 条に定める範囲とは「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超え」ないことをいいます。
なお、 1 ヵ月分の残業時間の端数処理として、 30 分未満を切り捨て、 30 分以上を1時間に繰り上げる措置は「常に労働者に不利となるものではなく、事務簡便を目的としたもの」であるため、認められています。 |