労働基準法第 108 条は「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他命令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」と、使用者に賃金台帳の作成義務を課しています。
そして、同法施行規則では、賃金台帳に記載すべき事項について、 (1) 氏名、 (2) 性別、 (3) 賃金計算期間、 (4) 労働日数、 (5) 労働時間数、 (6) 時間外・休日・深夜労働時間数、 (7) 基本給、手当その他の賃金額、 (8) 賃金の一部控除額、を挙げています。したがって、使用者は、賃金台帳を作成するために、1人ひとりの労働者の労働時間等について把握する必要がありますが、労働時間の把握の方法には、タイムレコーダーを利用する、上司が出勤を記録する、自己申告制とするなど、企業によって様々な方法が採られています。
ところで、ご質問では自己申告制を採用しているが、その申告の信憑性について疑いをもっておられるとのことです。こうしたことはよくあることですが、使用者側からみれば、一般に、労働時間の自己申告制は本人の申告によって労働時間を把握しようとするものですから、そこには強い信頼関係がベースになるものです。ご質問では、その信頼がゆらぐような事態が生じているものと推察されます。
そこで、この問題を解決するためには、信頼関係を回復するために率直な意見交換をしてみる必要があります。それでも解決しないようであれば、労働時間の管理を実施するとともに、具体的に日々の労働時間を把握する必要があります。そのための方法には、仕事の進行状況を随時チェックするなど、労働時間の管理を強めることを前提に、出先で終業時にFAXで連絡させるとか、時間外労働をするときは事前申告をさせるなどの方法を講じるようにするとよいでしょう。ただし、この場合にも、申請された時間外労働に対しては、割増賃金を支払う必要がありますので注意してください。
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