次年度分の年次有給休暇を労働者に与えることは違法です。また、就業規則等で、欠勤を年次有給休暇に振替えることができる旨の定めがあれば、欠勤を年次有給休暇に振替えることができますが、この場合、労働者からその申し出があり、かつ使用者がそれを承認したときにのみ認められます。
まず、欠勤に対して次年度の年次有給休暇を充当し、相殺することができるかどうかという点ですが、次年度の年次有給休暇は次の基準日に発生するものですから、たとえ労働者からの申し出があった場合にも、年次有給休暇を前倒しして付与することは違法となります。したがって、欠勤がその年度の年次有給休暇の日数を超えた場合には欠勤控除をするか、その年度に法定以上の年次有給休暇を付与するか、どちらかの方法によるほかありません。
次に、病気等の事由によって欠勤した後で、その欠勤を年次有給休暇に振替えることができるかどうかという問題ですが、裁判例でも、「年次有給休暇を請求する場合労働者はあらかじめ時季を指定し、これを使用者に通知することを必要とし、労働者において任意に遅刻その他の事情により就業にさしつかえた日を有給休暇に振り替えることはできないと解すべきであるが、使用者において労働者の申し出により遅刻その他の事情で就業にさしつかえた出勤日を年次有給休暇に振り替えた場合には、その出勤日は、あらかじめ決定されている休暇と同じく始業時刻当初から休暇となる」(昭 37.3.30 新潟地裁判決、「電気化学工業事件」)としています。したがって、労働者の申し出によらずに病院が一方的に欠勤と有給休暇を振替えることはできません。 |