損害の全額を身元保証人に賠償してもらうことは難しいでしょう。 身元保証人に対する損害賠償請求は、身元保証書に則って行われます。しかし、身元保証人になる者は、損害賠償額がどの位になるのかをあらかじめ考えてから身元保証書を提出しているわけではありませんし、日頃から当該職員の行跡を知悉しているわけではありませんので、突然、損害賠償請求を突きつけられても困惑します。
この点について、「身元保証に関する法律」では、実際に、身元保証人の損害賠償額を決定するに際しては、
(1) 職員の監督に関する事業主の過失の有無
(2) 身元保証人が身元保証を引き受けるに至った事由
(3) 身元保証人が身元保証を引き受ける際に払った注意の程度
(4) 職員の任務または身上の変化のほか一切の事由
これらの 4 点を斟酌するとして、身元保証人の責任を軽減する一方、事業主の監督責任を重くみています。また、
(1) 職員に業務上不適任または不誠実な行為があり、これにより身元保証人に責任が生じる恐れがあるとき
(2) 職員の任務や任地を変更したことにより、身元保証人の責任が加重になるとき、または職員の監督が困難になったとき
これらの場合には、事業主はその旨について身元保証人に通知することを義務づけています。そして、身元保証人は、こうした通知を受けた場合、身元保証を一方的に解除することができることとし、身元保証人を保護しています。
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