ご質問は、残業時間が一定時間に達した場合に代休を付与し、従業員がそれを取得したときに相殺するという制度が、法律上問題があるかどうかということですが、結論から申し上げますと、時間外労働割増賃金が法定どおり支払われ、かつ、残業時間と代休を相殺することを労働協約に定めている場合には、このような措置も特に問題はないものと思われます。
たとえば、所定労働時間が8時間、土曜日と日曜日が休日の会社で、土曜日に8時間勤務させ、月曜日に代休(就業規則で無給と定めている)を与えた場合について考えてみましょう。このとき、まず、土曜日の8時間の勤務に対しては割増賃金を含めて8時間 ×125 %の賃金を支払った場合、月曜日の代休に対しては、1日分の賃金(8時間 ×100 %)を差し引くことができます。その結果、一給与計算期間で見たときには、通常の賃金は支払われることになり、かつ、2割5分の割増賃金も支払われることになります。
以上の例のように、貴社が導入を検討されている残業時間が8時間に達したときに代休を取得することができるという制度も、同一の給与計算期間中に代休が取得され、2割5分増の割増賃金を支払う限り、法律上特に差し支えないものと考えられます。
なお、労働協約による場合にも、個々の労働者が代休を取得する意思がないのに一方的に代休として取扱うなど、労働者の意思に反して残業時間と代休を相殺することはできません。あくまでも代休を取得するかどうかの選択権を労働者に与えること、また、代休を取得しない場合には、割増賃金だけでなく通常の賃金も支払うようにすることが必要ですので、運用に際しては、十分注意をして下さい。
Point : 労働組合との間で労働協約として定められた場合には、残業と代休を相殺することも法律上特に問題はないと考えられますが、この場合でも、同じ給与計算期間内に代休を取得しなかった社員に対しては、割増賃金のほか通常の賃金も支払わなければならないことに注意して下さい。
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