内定者の入社前研修中の事故が労災となるかどうかを考える場合、まず研修参加者に労働者性があるかどうかが問題となりますが、労働者性があるかどうかは、
(1) 労務の提供がなされているかどうか、
(2) 労務の提供に対する報酬が支払われているかどうかによって判断されます。
当該研修が業務知識を身につけさせることを目的としたものであること、また、参加が義務づけられていることからみると、研修中労務の提供がなされており、賃金の支払いが必要と考えられます。したがって、当該研修への参加者には労働者性があると解されます。
次に、労災保険が適用されるためには、第二の要件として、次の二点を満たすことが必要です。
(1)労働者が災害発生時に使用者の指揮監督下におかれていること(業務遂行性)
(2)研修と災害との間に相当の因果関係があること(業務起因性)
例えば、研修終了後の自由時間に事故に遭った場合は、業務遂行性、業務起因性ともに認められませんが、担当者の後について工場を見学して回っている最中に階段を踏み外したり、実際に簡単な機械の操作をしているときに、誤って機械に手をはさんでしまった場合などは、この二つの要件を満たすものと考えられます。
したがって、当該研修中に発生した事故に、業務遂行性と業務起因性の両方が認められれば、労災保険から給付を受けることができるでしょう。
なお、上記のような研修への参加の往復の時間は通勤に準じたものと考えられますので、その途上で災害に遭った場合には、指定された径路を途中で逸脱していない限り、通勤災害として扱われることになります。 |