「裁量労働みなし労働時間制」(裁量労働制)は、業務の性質上(業務の種類は限定されています)、その遂行方法を大幅に従業員の裁量にゆだねる必要がある場合には、労使協定に定めた時間労働したものとみなすことができるという制度です。
裁量労働制は、近年画一的な労働時間制度になじまない業務が増加してきたことに対応して設けられた制度ですが、この制度を採用したからといって、労働基準法に定められている労働時間や休日等の規定がすべて除外されるわけではありません。
したがって、年次有給休暇は裁量労働制の下でも通常通り付与しなければなりません。しかし、裁量労働制の対象者がかなりの人数にのぼる場合には、有給休暇をとって休んでいるのか、社外で仕事をしているのか把握しにくいケースが出てくることも考えられます。そこで、このような場合には、年次有給休暇の取得に際して、特に事前の届出を励行させることが必要でしょう。
なお、裁量労働制の場合には、フレックスタイム制のように「標準労働時間」という考え方がありませんので、みなし労働時間の長さが通常の労働時間よりも長い場合には、年次有給休暇を取得した日の賃金を、通常の労働時間分とするかみなし労働時間分とするかが問題になります。この点に関する行政解釈は出されていませんので、実際の運用上の混乱を避けるためには、通常の賃金(所定労働時間に対する賃金)を支払うことにするか、労使協定でみなすこととした時間に対する賃金を支払うのかについて、就業規則または労使協定によって定めておくとよいでしょう。
Point :
事前の取得届の提出を励行させることが大切です。
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