労働基準法は、「就業規則は法令又は当該事業について適用される労働協約に反してはならない」と、使用者が一方的に制定する就業規則より労働協約の効力が優位に立つものとしています。
しかし、労働基準法は別の条文で、フレックスタイム制は、「使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者」に適用することができることとしており、フレックスタイム制を導入するためには、まず、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねることを就業規則に定めることを要件としています。
したがって、一般の労働条件等について就業規則と労働協約との間に差がある場合に労働協約が優先されるとした労働基準法の定めは、フレックスタイム制採用の要件には該当せず、就業規則の定めがその採用の根拠として必要となります。つまり、フレックスタイム制を採用するためには必ず就業規則の定めがなければならず、労働協約で代替することはできないわけです。ただし、フレックスタイム制を導入するためには、就業規則に定めるだけでなく、労使協定を締結することが必要とされており、過半数で組織された労働組合との間で労働協約を締結する場合には、この労使協定に代えることができます。
なお、労働基準法上の「就業規則その他これに準ずるもの」とは、常時使用する労働者が 10 人未満の就業規則作成義務のない事業場の使用者が作成した文書をいい、労働協約はこれに当たりません。
Point :
フレックスタイム制を採用するためには就業規則に定め、かつ、労使協定を締結する必要があります。 |