結論的にいうと、このケースにおける商品の引き揚げは問題ありません。
得意先の倒産すると、多数の債権者が先を争って自社債権を回収しようと努力します。商品の引き揚げは倒産時に最も多くみられる現象の1つです。 商品の引き揚げに関し、問題となる要素は下記の2点です。
・引き揚げの方法と態様が合法的であるか
・引き揚げる商品が自己売りか他人売りか
販売した商品が得意先の占有下にあるとき、代金の未払いがあるとしても、得意先の承諾を得ずして当該商品を引き揚げることは違法です。もし強行すれば、刑法上の窃盗罪や、得意先社屋への住居侵入罪に問われかねません。さらには民事上の損害賠償責任を負うことになります。
しかし、ご質問のように得意先の責任ある立場の社員から自社商品の引き揚げを承諾している場合には、全く問題は生じません。念を入れるのであれば、後日承諾の有無を巡る争いとならないよう、承諾文言および押印のある書面を入手しましょう。
また、引き揚げ対象となる商品が自己売りのものか他人売りのものかという点ですが、自己売りの場合には、まず問題とはなりません。しかし他人売りの商品の場合、債務者の承諾があったとしても、詐欺行為取り消しや否認権行使の対象とされる恐れがあります。 |