社長個人が企業の資金不足を補填しなければならないケースが中小企業ではよくあります。そうした資金は通常、長期あるいは短期借入金に計上されているわけです。
そうすると、その支払利息を払っているとかいないとか、また、その金利は高すぎるとか低すぎるとか、実際には社長が未収であっても、 20 万円を超えて受取利息が個人の確定申告時に雑所得として総合課税されるとか、いろいろな問題が発生してきます。
そのような意味でも、社長から企業に対する貸付金を、社債に切り替えることをおすすめします。
一般的に社長の役員報酬に対する源泉税率は、諸控除した金額の 20 %以上になるでしょうから、社債利子に対する 20 %の源泉分離課税は税務上のメリットもあります。
通常、社長からの借入金を資本に充当したいと思っても、実際に現金を銀行に1日も保管せずに、議事録のみで増資に切り替えられるのは 500 万円が限度です。これを何度も繰り返しを行えば良いわけですが現実的ではありません。
例えば、企業への貸付金が 5000 万円あれば、 10 回も登録せねばなりません。その上、株主が何人もいれば、債務超過でない場合に、社長1人のみの額面による増資は他の株主からの贈与であるとか、企業からの一時所得とか、何かと税務上の問題が起きる可能性が高くなります。
その点でも貸付金から社債への切り替えは、取締役会の議事録のみでOKとなり、実際に現金を動かさずにできます。
増資であれば、授権資本金内であれば取締役の決議だけでよいわけですが、授権資本金の枠を超える時は、定期株主総会の時か、または臨時株主総会を開催して、授権資本を現在払込金額の4倍まで拡げた上で増資する必要があります。
もっとも、株主でない第3者に払い込ませるとなると、その時点での経営状態により、額面では無理となり、プレミア付でなければならない場合も多くあります。ちなみに、このプレミア付の部分が資本準備金となるわけです。
ともかく、増資により資本金を増やすより、社債を購入してもらう方が企業にとっても有り難いことですし、社長個人にとっても喜ばしいこととなるのです。
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