いま飲食店は「おいしいのは当たり前」といわれる時代になっています。ただし、誤解してはいけないのは、これは何も、調理技術や料理の完成度を偏重しているという意味ではないということです。
おいしいのは当たり前というのは、もはや単純な「おいしさ」だけではお客を呼べない、つまり、おいしさ以外の付加価値が強く求められているということなのです。
では、その付加価値とは何か。それは接客サービスであり店内の雰囲気ですが、高級店でもない限り、内装デザインの善し悪しが問題になることはあまりありません。問題なのは、接客サービスのあり方です。そしていうまでもなく、店内の雰囲気は、内装デザインよりもサービススタッフの感じで大きく左右されるものです。
高度な接客が要求される高級店と違い、一般の飲食店の接客サービスは、それほどむずかしい仕事ではありません。パート・アルバイトでも十分にこなせる仕事です。それにもかかわらず、本当にお客を満足させるようなサービスができないお店が大半なのは、「おもてなし精神」が欠如しているか希薄なためとしか考えられません。
もっといえば、アルバイトだからできないのでなく、お店側の教え方が悪いのです。もしも経営者が、アルバイトだからこの程度でいいなどと考えていたら、そのお店のサービスレベルが向上することはあり得ません。一方、お客にとってはスタッフの身分など何の関係もないことです。どういう接客を受けたか。お客の関心事はその一点なのです。
サービススタッフは全員が「お店の顔」です。一人ひとりがお店を代表してお客と接しているのです。そして、気分を害したお客の評価はお店全体に対して下され、悪評はたちまち口コミで広がってしまいます。どうすれば「おもてなしの心」をスタッフ全員が共有できるか。真剣に取り組む必要があります。
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