立地の可能性がわからないときは、情報と調査で裏付けをとれ その1
今回からは失敗しないために情報と調査で裏付けデータを入手し、店が開店しても役立つ情報を教えます。めぼしい物件が決まったら、商圏を設定してみましょう。 商圏とは出店する物件の位置を起点に、どのぐらいの距離からお客様である消費者が来てくれるのかを決めることで、今後のマーケティングデータなどの分析が生きてきます。 商圏を決める時に準備するものは、なるべく丁目や番地まで詳しくのっている地図(ただし、住宅地図は不可)、赤鉛筆を用意します。
商圏設定の方法は昔、店舗を起点にした円を書いて設定していましたが、最近では円を描くことは変わりませんが、実際に人や車の流れを見ながら、時間で判断するようになってきました。なぜこのように変わってきたかというと、信号や道幅、歩きやすさ、交通量などによってお店の場所までの時間が異なることから、実際の時間で判断するようになってきたのです。
従って、商圏の決定方法は、徒歩圏の物件の場合、一次商圏は約 5 分の距離で歩いても苦にならない距離を指し、一番利用率が高い商圏と言えます。二次商圏は約 10 分の距離を指しますが、二次商圏は目的を持ってわざわざ来ていただける商圏を言います。
次に車の場合は、一次商圏は約 10 分の距離で、車をわざわざ車庫から出しても苦にならない距離であり、二次商圏は 20 分の距離を指し、目的を持ってわざわざ来ていただける商圏を言います。
そして、実際に歩いてみたり、車で走ってみたりして、実際に地図に距離と道筋を赤鉛筆で記入して商圏を決めていきます。ここで注意しなければならないのは、徒歩圏の場合、駅や大きな交差点、踏切、トンネルなどで道筋が分断されるということを知っておいてください。
たとえば出店物件が駅の北口にあり、南側の距離も歩いて、 10 分ぐらいだから商圏になると考える人がいますが、これは間違いです。駅をまたいで反対側の南口までくることは人をかき分けたり、階段を上り下りしたりと、実際の時間だけでなく、お店にたどり着くまで苦労することになるので、この場合は商圏としては考えにくいのです。
その例として、郊外やロードサイドなどの駐車場を持つ立地についての商圏についてお話しします。
1 )出店したいお店の駐車場の入口から車で 10 分圏を第一次商圏に設定します。一番良く来店してくれると思われる距離を指し、 15 分圏を第二次商圏といい、ワザワザそのお店に来て頂ける距離を指します。ただし、地域によっては 20 分や 30 分かけても来てくれる地域もある事も事実ですので、あくまでも、商圏を設定することはその地域を知り、その商圏で商売が成功するかどうかを判断する基準になるという事です。
2 )用意するものは、縮尺が細かい地図(細い通りが細かく記載されているもの)、マーキングするため蛍光ペン、時間を計るための時計、車を用意します。
3 )用意ができたら、実際に時間を計りながら車を走らせてみます。
4 )第一次商圏と第二次商圏を車で移動し、地図に走って来た道をマーキングする。
5 )建っている建物と住んでいる住人を観察し地図に記入する。
6 )建物の種類を見るポイント
イ)駐車場に止まっている車の台数及び駐車場のスペースから、車の一世帯当たりの保有台数を把握し、だれが、車を利用しているのかを想定します。例えば、車が2台で新築住宅であれば、ご主人と奥様で一台ずつ、3台であれば子供、古い住宅で規模が大きければ、 3 台で祖父母、ご主人、奥様、 4 台以上でその子供というように想定してみる
と、ターゲットを設定する上で役立ちます。
ロ)戸建て住宅
新築か年数が経っている古い住宅かによって異なります。新築の場合、若い夫婦が多く、古い建物の場合は成熟しているためファミリーや二世帯のファミリーが多いでしょう。新築の住宅が多い場合は、夫婦共働きの方が居住しているケースが多く、お金に若干の余裕がある場合があります。業態としては、アルコール主体の居酒屋、パブ、バーなどの飲食店ではなく、ちょっとしゃれたレストランや専門店で客単価的には 1,500 〜2,500 円前後、金土日の集客が高いと思われます。
古い建物の場合は、お年寄りと同居のケースがあり、和食の業態が受け入れられやすいでしょう。しかし、ファミリーはある程度、核家族化しており、子供も成人していたりして、家族での行動があまり望めない場合もあることから、この場合は、子供をターゲットにするか、親、主婦をターゲットにするかによって業態が異なります。高級業態もこの地域では成立する可能性が高いと思われます。
ハ)分譲マンション
ロ)と同じく新旧を確認する必要があります。
ニ)賃貸マンション
共働きの夫婦や同棲のカップルが多い可能性が高く、共働きではあるものの、若い方が多いため、食べ物主体のレストラン、テイクアウト主体の弁当店など幅広い業態が選べますが、客単価は低く、 500 円〜 2500 円前後の業態となります。
ホ)公団住宅
低所得の方が多いか、お年寄りが多い場合がありますから、低価格帯の業態となります。特にお年寄りが多い場合は、事業の一般的な業態の成立性はかなり低く、例えば、シルバ−向けの低下価格な宅配の弁当屋が有効です。また、若い方でも所得が低いので低価格のファーストフードや弁当屋などが業態としてあげられます。
ヘ)ロードサイドの企業
ロードサイドの企業には、車のディラー、ガソリンスタンド、ドラッグストアー、スーパー、ショッピングセンター、病院などがあります。これらの企業については入店し、そこに来いる客層やそこで働くスタッフを観察します。これらの人びともターゲットとなります。
できれば、この中の繁盛店に関しては、時間帯で入店状況を確認する事もお忘れなく。例えば、駐車場の車の台数を把握するとそのお店のピークが掴め、また、その時にお店に入ればどのようなお客様が来ているのかも把握することができるからです。
このチェックを行うことで、お店の営業時間の設定の材料にしたり、時間帯ごとにターゲットを設定する材料になるのです。
7 )住人を見るポイント
服装、年齢層、男女比などを見て客層を判断する必要があります。
8 )店前通行量と車の車種を調べる。
平日と週末を分けて、一日の前面通行量や車種を見てみましょう。車種はトラック、自家用車。営業車と大まかに3つに分類すると駐車場の台数やターゲットがわかってきます。 トラックが多い産業道路などのロードサイド店舗は、トラックをターゲットと思うかもしれませんが、駐車場スペースがかなり必要となるため、賃貸物件ではかなり事業としては難しいと考えて下さい。
次に営業車が多い場合は、サラリーマンや OL の利用が見込まれますし、自家用車が多い場合は主婦やファミリ−をターゲットとすることができます。
9 )踏切では商圏は分断される可能性が高い。
10 )せっかく町を車で走るのですから、競合店や学校や病院など施設も見ておきましょう。
●競合店を見る場合は、競合店調査を行う事で、ターゲット(=客層)や客単価、商品などを決定する条件となります。詳しくは競合店調査で。
●学校は、大学か専門学校が対象となります。学校名と駐車場の有無を確認しましょう。 自動車通学の大学生をお客様として取り込むことができます。
●病院は総合病院であれば、入院患者のお見舞い帰りのお客様や看護婦がターゲットとなりますし、個人開業医で小児科や産婦人科が多いところは小さい子供が多い町でファミリーも若い方が多いということが考えられます。ただし、この場合は病院が新しかったり、きれいであることが見るポイントとなります。
次回は、立地の可能性がわからないときは、情報と調査で裏付けをとれ その2です。
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